声明書

 一、声明書

戦争は、防衛を名目に始まる。

戦争は、兵器産業に富をもたらす。

戦争は、すぐに制御が効かなくなる。

戦争は、始めるよりも終えるほうが難しい。

戦争は、兵士だけでなく、老人や子どもにも災いをもたらす。

戦争は、人々の四肢だけでなく、心の中にも深い傷を負わせる。

精神は、操作の対象物ではない。

生命は、誰かの持ち駒ではない。

海は、基地に押しつぶされてはならない。

空は、戦闘機の爆音に消されてはならない。

血を流すことを貢献と考える普通の国よりは、

知を生み出すことを誇る特殊な国に生きたい。

学問は、戦争の武器ではない。

学問は、商売の道具ではない。

学問は、権力の下僕ではない。

生きる場所と考える自由を守り、創るために、

私たちはまず、思い上がった権力にくさびを打ちこまなくてはならない。

二、 あしたのための声明書

わたしたちは、忘れない。

人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。

戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。

強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。

わたしたちは、忘れない。

マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。

権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。

居眠りに耽る議員たちの弛緩を。

わたしたちは、忘れない。

声を上げた若者たちの美しさを。

街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。

内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。

わたしたちは、忘れない。

戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。

路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。

聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。

きょうは、はじまりの日。

憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。

賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。

人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。

自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。

わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。

                     自由と平和のための京大有志の会

一、わたしの『やめて』

くにと くにの けんかを せんそうと いいます

せんそうは 「ぼくが ころされないように さきに ころすんだ」

という だれかの いいわけで はじまります

せんそうは ひとごろしの どうぐを うる おみせを もうけさせます

せんそうは はじまると だれにも とめられません

せんそうは はじめるのは かんたんだけど おわるのは むずかしい

せんそうは へいたいさんも おとしよりも こどもも くるしめます

せんそうは てや あしを ちぎり こころも ひきさきます

わたしの こころは わたしのもの

だれかに あやつられたくない

わたしの いのちは わたしのもの

だれかの どうぐに なりたくない

うみが ひろいのは ひとをころす きちを つくるためじゃない

そらが たかいのは ひとをころす ひこうきが とぶためじゃない

げんこつで ひとを きずつけて えらそうに いばっているよりも

こころを はたらかせて きずつけられた ひとを はげましたい

がっこうで まなぶのは ひとごろしの どうぐを つくるためじゃない

がっこうで まなぶのは おかねもうけの ためじゃない

がっこうで まなぶのは だれかの いいなりに なるためじゃない

じぶんや みんなの いのちを だいじにして

いつも すきなことを かんがえたり おはなししたり したい

でも せんそうは それを じゃまするんだ

だから

せんそうを はじめようとする ひとたちに

わたしは おおきなこえで 「やめて」 というんだ

二、あしたがまっている

わたしは わすれないぞ

ひとのはなしを ちゃんと きかないで

むりやり おかしなきまりを つくったおとなを

「けんかはいやだ」のきもちを わがままと きめつけて

ばかにしていた つめたいおとなを

ぼくは わすれないぞ

こわがらせて いばっていた おとなのかおや

こわがって ぺこぺこしていた おとなのかおを

たいせつな おはなしをしているのに

ぐうぐう ねていた おとなのかおを

わたしは わすれないよ

おかしいことは おかしいと つたえようとした

おねえさん おにいさんたちの しんけんなかおを

おばあさん おじいさんたちの おおきなこえを

だれにも あやつられない おとなたちの ゆうきを

ぼくは わすれないよ

つらいおもいでを むねにして たちあがった おとなを

きっぱり むねをはって こぶしをつきあげた おとなを

きいてもらえないかも しれないのに

ずっと こえをあげつづけた たくさんの おとなたちを

きょうからは わたしが ぼくが はじめるんだ

おとなが まちがったら わたしたちが なおす

ひとのはなしを きけるひとを ぼくたちが えらぶ

じぶんかってな おとなは わたしたちが やめさせる

「じゆう」や「へいわ」は ぼくたちの て で つかむんだ

わたしは わすれない

ぼくは わすれない

まだ なにも おわっていないから

あしたが まっているから

         じゆうと へいわの ための きょうだい ゆうしの かい