反戦の声ふたつ

 アメリカの対イラク武力行使を憂える声は、世界各地であがり、日本の市民運動グループなどもいち早く反対表明を示している。それらの声明文はアメリカ大統領府はもとより各国のアメリカ大使館、主要メディアなどに続々と送られているはずだが、一方、インターネット上では、あるはずもない国連の名前による署名依頼が世界中に蔓延するなど、いたずらまがいの行為も見られる。次に、小さいながら確かな声を伝える二つ、*反戦を表明する詩人たち *ハロー、アメリカ の動きを紹介する。

 

  *反戦を表明する詩人たち

 

 詩人および友人たちへ

 ホワイト・ハウス(米大統領府)の印がおされた手紙を受け取り、開けてみた私は嬉しいどころか、同封されていたカードを読んで、むかつきさえしました。カードには、こう書かれていたのです。

 

  ローラ・ブッシュは次の催しにあなたのご出席をいただきたく、ご招待申し上げます。

    ホワイト・ハウス・シンポジウム「詩とアメリカの声」とレセプション

    2003年2月12日水曜日、午後1時

 

 このカードを受け取った前日、私は大統領がイラクに対して武力行使を表明した長々しい演説を読んだばかりでした。アメリカがドレスデンや東京に落としたような一斉爆撃を再び実施し、無数の罪のない市民たちを殺そうというのです。

 このような道徳的に破綻した、良心のかけらもない考え方に合法的に立ち向かうには、ベトナム戦争反対の声をあげるために組織されたような「反戦詩人運動」をまた立ち上げることが唯一の方法ではないかと思います。

 詩人の皆さん一人ひとりに、アメリカの良識の声をあげ、この戦争に反対する意志表明に名前を連ねてくださるよう、お願いします。

 そして2月12日を「反戦詩」の日にすることに賛成していただきたいと思います。12日の午後には抗議文をまとめ、ホワイト・ハウスに提出します。

 どうかあなたの名前と、良心を伝える詩もしくは声明を、次のアドレスに送ってください。

  kokua@olympus.net

 組織をたちあげ、まとめていくには時間が足りません。この手紙を知り合いの詩人すべてに送って下さるよう切にお願いします。2月12日を、本当の意味でアメリカの詩人たちの声をホワイト・ハウスに聞かせる日にするべく、どうか協力してください。

                 サム・ハミル

 

 上の手紙は、アメリカの詩人リサ・ローウィッツさんから日本の詩人、木島始さんに次のようなコメントとともに送られてきた。その後の木島さんの報告によると、1500人に及ぶ国内外の詩人たちから署名が集まり、まずは2月12日のホワイト・ハウスでのブッシュ大統領夫人の詩の催しは延期されたとのことだ。

 

2003年1月19日

 詩人の仲間たちへ

 このような行動をとることについて考えてみてください。手紙の差出人はサム・ハミルです。彼はアメリカの詩人であり『コッパー・キャニオン・プレス』の編集長であり発行人です。 リサ・ローウィッツ

 

  *ハロー・アメリカ

 

 地球上の市民の皆さんへ

「ハロー・アメリカ」キャンペーンは、2003年1月6日12時30分に、ノルウェーのオスロで始まりました。いま世界中に広まりつつあります。平和を愛するアメリカ人たちを支持するメッセージを世界中に流すものです。

 賛同してくださる方は、次のようにお願いします。

 1=「ハロー・アメリカ」の英文手紙の後にあなたの名前を入れてください。

 2=次のアメリカ大統領府および報道機関のアドレス宛に送ってください。

 3=すでにサインをした人たちの最後にあなたの名前を付け加えて、あなたの友人などに送ってください。

 

>managing-editor@nytimes.com; news-tips@nytimes.com; CNN@cnn.com;

>letters@washpost.com; localnews@globe.com;

>slevinson@knightridder.com; rranderson@tribune.com;

>homeforum@csps.com, <mailto:tribune.comhomeforum@csps.com>;

>world@csmonitor.com, <mailto:world@csmonitor.com> ;

>readers.rep@latimes.com; feedback@wsj.com; newseditors@wsj.com;

>editor@american-reporter.com; cwarmbold@ajc.com; pgast@ajc.com;

>gbailon@dallasnews.com; rbarrick@dallasnews.com;

>rchavira@dallasnews.com; philly_feedback@knightridder.com;

>publiceditor@tribune.com; eyewitness.news@abc.com,

><mailto:eyewitness.news@abc.com> ; daily@timeinc.net;

>letters@time.com, president@whitehouse.gov;

>vice.president@whitehouse.gov

>

  「ハロー、アメリカ!」

 

 アメリカ合衆国は今まさに戦争を始めようとしています。戦闘的で予断を許さないアメリカの指導者が不安と恐怖を広めています。その指導者の名前はジョージ・W・ブッシュといいます。

 ミスター・ブッシュは、大量破壊が可能な巨大な兵器工場を持っています。そしてそれを使う権利は自分にあると主張しています。

 彼はアメリカ国民の大多数から選ばれた指導者ではありません。(ブッシュに票を投

じたのは、アメリカの成人のうち32%です。対するアル・ゴアとの票差は539、989票でした。)

 彼が率いる政党は、富裕なエリートである彼自身を含めて、巨額の富と特権をほしいままにしています。一方、貧困と絶望の中に生きている人々は何百万という数にのぼります。少数民族に属する人々は抑圧され、人権を奪われています。

 アメリカ合衆国は、さまざまな人権条約に署名をしないことで、世界に冠たる国です。

 サンキュー、アメリカ!

 私たちは、多くのアメリカ人が、すべての人々に平和と繁栄と正義とを願っていることを知っています。あなた達が善良な人々であることを知っています。ほかの国々の人たちと同じようにーーイラク、イスラエル、パレスチナ、韓国、ウクライナ、オーストラリア、ノルウェー、メキシコ、カナダ、ドイツ、インドネシア、ブラジル、インド、ボリビア、イラン、ウガンダ、ポルトガル、そのほか、すべての国の人たちと同じように。

 あなたの国が生んだ人たちにも感謝します。エイブラハム・リンカーン、ベシー・スミス、エルヴィス・プレスリー、フランクリン・D・ルーズベルト、ハンク・ウィリアムズ、マーチン・ルーサー・キング・Jr.、トニ・モリスン、ジミ・ヘンドリックス、ジェシー・オーウェンズ、ウッディ・アレン、マイルス・デイヴィス、アーネスト・ヘミングウェイ、ヘレン・ケラー、マドンナ、ジョン・スタインベック、ジミー・カーター、ジュリア・ロバーツ、ムハメッド・アリ、そのほか沢山の人たちに。

 ジョージ・W・ブッシュがアメリカの名声を汚し地球全体を破壊しないうちに、彼を排除しなければなりません。そのために何なりと私たちにできることがあるなら、どうぞ、教えてください!

 敬具  アメリカ以外の世界中の国々で心を痛めている友人の一人として

 

 上のメッセージは1月13日に高橋に送られてきたものだが、そのときはおよそ120人のノルウェーのジャーナリストや地方議会議員、市長、学者などの名前が列ねられ、最後に高橋に送ってくれた、アメリカのシカゴ大学人文学部東アジア言語文化学科長ノーマ・フィールドさんの名前があった。ノーマ・フィールドさんは、みすず書房から『祖母のくに』(自分で日本語で書かれたもの)『天皇の逝く国で』(英語からの翻訳)の著者。

以上         (翻訳・高橋茅香子)