雲のやうに

果樹園を昆虫が緑色に貫き 

葉裏をはひ 

たえず繁殖してゐる。 

鼻孔から吐きだす粘液、 

それは青い霧がふつてゐるやうに思はれる。 

時々、彼らは 

音もなく羽搏はばたきをして空へ消える。 

婦人らはいつもただれた目付で 

未熟な実を拾つてゆく。 

空には無数の瘡痕がついてゐる。 

肘のやうにぶらさがつて。 

そして私は見る、 

果樹園がまん中から裂けてしまふのを。 

そこから雲のやうにもえてゐる地肌が現はれる。