講談師・神田松鯉先生にご紹介いただき、ペンクラブに入会。そしてAmazonで電子書籍を出版していたことで、入会とほぼ同時に電子文藝館委員会にも入らせていただきました。群馬でイラストレーターをしておりますが、突然自分に寄せてきた文学の大波にめちゃくちゃ戸惑いました。電子文藝館委員に承認された会議後、帰りの高崎線の中で、「地方の広告畑にいる自分が、この委員会に何が貢献できるのだろう?? どうしよう~、辞めたら松鯉先生に二度とお会いできないかな。でも会費払っちゃったし…」と、あれやこれやと考えがぐるぐる。いつもは長くてヒマつぶしに困る乗車時間が、あっという間に感じたのでした。
当委員会の中心となる活動は、電子文藝館のホームページに載せる原稿の校正です。ある時、全国の文学館とホームページのリンクを貼る活動もしていると伺いました。「それなら私にも出来る! そして地元群馬にも貢献できる!」急に視界が明るくなった感じがして、群馬県内の文学館は全部まわろうと心に決めました。
群馬県にある文学館で主なものは、
●徳富蘆花記念文学館(伊香保町) ●前橋文学館(前橋市)
●土屋文明記念文学館(高崎市) ●田山花袋記念文学館(館林市)
以上4館。徳富蘆花記念文学館は既にリンクが貼られていたので、他3館をまわることにしました。土屋文明記念文学館と田山花袋記念文学館は訪れて間もなく、「ペンクラブとのリンクなら是非」とご快諾いただけました。しかし一番最初に伺った前橋文学館は、数か月経ってもご返事がありませんでした。
前橋文学館は、前橋市出身の詩人・萩原朔太郎ゆかりの文学館。2年ほど前にお孫さんの萩原朔美さんが館長に就任されました。萩原朔美さんは、寺山修司氏と共に「劇団天井桟敷」を牽引。私的には雑誌・ビックリハウスの編集長だったということが印象に残っています。そんな朔美さんが館長さんなので、返事が来ないことが敢えてNOなのか? それとも多忙で忘れているのか? …またあれやこれや考えがぐるぐる巡りました。
その後、『萩原朔太郎をデザインする』という企画展を仲間と開催することになりました。なんと企画展は前橋文学館とコラボすることに。そして企画展開催中に朔美さんが萩原朔太郎の詩を朗読するという、素晴らしいイベントが決定しました。朔美さんとお話しできるチャンスを逃してはならぬと仲間に協力を頼み、リンクの交渉をすることにしました。あんなに考えがぐるぐるしていたのに朔美さんご本人を前にしたら妙に胆が据わってしまい、速攻で切り出ししてしまいました。
「ペンクラブのリンクのお願いに伺ったのですが、ご返事いただけてないのです」
「え!そうなの?? いや、全然オッケーよ! どんどんやってください!」
と、意外にもあっさりOK。いつも前橋にいらっしゃる訳ではないので、朔美さんに伝わる前に話がどこかで止まってしまったのかもしれません。その後副館長さんもご紹介いただき、ようやく電子文藝館委員会にも報告することができました。
その日の朗読会。朔太郎の詩を朔美さんがお読みになる…それはもう感慨深いものがありました。
「朗読会っていってもさ、朔太郎の詩なんか読んだことなかったよ。がはは。」
物静かで口数少なく、部屋の隅でひとりそっと佇む…朔美さんに対して勝手にそんなイメージを抱いておりましたが、とっても気さくな方だったので何だか拍子抜けしてしまいました。良い意味で!
地方の商店街は、衰退の一途をたどっております。前橋市内の商店街も、日曜日の昼間でさえ人がいないという深刻な状況に陥っております。文学館の存在は、地方観光の活性化を担う大きな役割を持っていると、リンク依頼の活動を通して大いに感じました。朔美さんの明るさと奇抜な発想力で、前橋文学館を拠点に、この街が少しでも明るい変容を遂げてくれればと願います。
電子文藝館のリンクを通じ、地方の文学館を知っていただき、たくさんのお客さまが足をお運びになられることを期待します。そんなきっかけづくりが出来るこの活動は、プレッシャーがかかりながらもわくわくしてしまいます。まだガチガチに緊張しておりますが、微力ながら今後もお手伝いさせていただきます。どうぞ宜しくお願い致します。