6年前に焼失した世界遺産ノートルダム大聖堂が修復され、現地パリでは昨年12月7日、盛大な完工式典が行われた。東京では、完工を機に「パリ・ノートルダム大聖堂展―タブレットを手に巡る時空の旅」特別展が、昨年11月6日から2月24日までお台場の日本科学未来館で開催され、多くの見学者が訪れた(https://www.miraikan.jst.go.jp/)。
ノートルダム大聖堂といえば、電子文藝館には森有正著『遥かなノートル・ダム』『遠ざかるノートル・ダム』の2編を『ノートルダムと25年』のタイトルで掲載している。
著者森有正氏は、戦後間もない1950年パリに留学。1952年には周囲の反対を押し切って東京大学助教授を退職し、第二次世界大戦後まだ日本人に対して悪感情の残る中パリに定住された。そしてフランス国立東洋語学校、パリ大学東洋学部での教鞭とパリ国際大学都市日本館館長を務められた。以後1976年パリで客死するまで滞在4半世紀、ヨーロッパ文明の象徴というべきノートルダム大聖堂と対峙し、思索の結晶としての珠玉の文章を日本に送ってこられた。それは『遥かなノートル・ダム』と『遠ざかるノートル・ダム』に詳しい。
今回の展覧会は、「タイムポータル(時空の扉)を通ってノートルダム大聖堂の歴史を探検」するという企画だったが、電子文藝館に掲載された2編を検索し文学の扉も開いてほしい。